本に関わること株式会社モリサキ断裁

本にまつわる物の多くは「切る」という工程と切っても切り離せない。本そのものだけでなく、しおりや帯、本を詰めるダンボール箱もそうだ。

紙はさまざまなサイズに断裁される。大小問わず、複雑な形のものもある。切るためにはどんな工夫がなされているのだろうか。疑問を晴らすべく、カッティングのプロ、久留米市の「モリサキ」の工場を訪ねた。

厚さ20mmのベニア板をすんなりと切断していくレーザー

工場は明るく静か。道具を収納する棚はDIYで作成

「名前は出せませんが」と森崎准一社長が製品のパッケージを指差す。見慣れた大手メーカーの菓子、食品の箱が並んでいた。

モリサキが手掛けるのは、箱の形に打ち抜くための「抜き型」だ。クッキーをくりぬく時に使う型のようなものである。

「気体と液体以外はすべて潜在的なCuttingの対象」といい、さまざまな形の抜き型を作り続けてきた。グラフィックデザインも手がけるが、得意なのは箱の設計だ。

「細かい寸法や形を調整し、無駄がなく、生産ラインに載せやすい型を提案します。デザイン的に箱の強度が心配なところは、元のデザインを生かしつつ、強度を保てるように提案します」

半世紀近く、抜き型を作り続けてきた経験、技術力に裏打ちされた提案である。型は全ての原形になるもの。「私たちが商品の始発駅になりたいんです」という森崎社長の言葉にはプロとしての誇りがにじんでいる。

「抜き型」づくりは、昔ながらの職人技が生きている。レーザーカッターやCADなどを駆使しつつも、繊細さが問われる工程では手作業が欠かせない。

パッケージの設計図に従って、ベニア板に穴を開けて刃を配置し、抜き型を完成させる。その作業は単純そうに見えて、実はとても難しい。

木槌で刃を埋め込む。簡単そうにしているが力加減が難しい

高水圧で切り出された鹿。そんな馬鹿な!?

抜き型の上に紙をのせ、上から金属の板で押さえて紙を打ち抜くのだが、「刃が板に触れるギリギリのところにないといけません。刃が深く入ると板に当たって、刃が痛みます。反対に浅いと切り落とせません」という。

その見極めは刃を固定する社員の感覚が頼りだ。木製のハンマーで刃をベニア板に固定する作業である。新入社員は3年間、毎日のようにハンマーをふるって感覚を養う。

「技術が進歩しても、これだけは人間の方が高精度なんです」。曲線を出すときは、刃にアールを付ける。この作業も手で仕上げていく。

会社は来年で50周年。当初は森崎社長の父親が始めた小さな町工場だった。少年だった森崎社長にとって、格好の遊び場だったという。夏休みの工作は、転がっていた木材を利用して昆虫の模型を作ったこともある。

その頃から養われてきた「ものづくり」の精神は今も健在だ。ベニアを使ったテーブルセットを制作した。抜き型を作る際に出た端材の活用方法を探るうちに考案されたものである。今回の「Book at Me」の展示ブースでは、このテーブルを提供している。コロナ禍でマスク不足だった時期には、マスクをつくるための抜き型を無償で贈った。

型をつくるのが本業だが、想像力は型にはまっていない。「技術と工夫で、お客さんと一緒にものづくりをするのが一番のやり甲斐です」と森崎社長。

切ることの専門家は、人とのつながりを何よりも大切にしていたのであった。

森崎社長は現場仕事も手慣れたもの