本に関わることTHINNING間伐

THINNING

多くの人でにぎわうマーケットはいかにも楽しそう。いくつものテントが連なり、さまざまな商品が並んでいる。金属製のテントが並ぶ中で、ふと目についたのは木製のテント。珍しさもさることながら、間伐材で作られていたオリジナルである。このテントが作られた背景には、森を守ろうとする壮大な思いが込められていた。

マーケット型のイベント「THINNING」は2017年に福岡県糸島市で始まり、今年で6回目を迎えた。名前の由来は「間伐」を意味する英単語。その名の通り、間伐材を使ったアウトドアアイテムやインテリアなどの物販があったり、木工体験のブースもある。

活動におけるキーワードになっている「間伐」について、主催者のひとり、林博之さんが教えてくれた。

間伐すると森に光が差し込むようになる

間伐する時はいつも緊張感が漂う。危険が付きまとうからだ

もともと大手のアウトドア用品輸入会社「A&F」で働いていた林さん。東日本大震災がきっかけで8年前に糸島に移住し、現在はアウトドアショップ「GOOD DAILY HUNT」を経営している。仕事柄、自然について考えることが多かったといい、その中で日本各地で森が荒廃しつつあることを知った。

「放置された森は、太陽の光が差し込まなくて、木々が十分に成長できなくなります。根を深く張れないと、土砂災害が起きやすくなったり、本来なら生えるはずの草木もなくなり、植物の循環が廃れて森そのものが痩せてしまいます。そうした状態から森を守るには、増えすぎた木々を間引く、つまりは間伐が必要になります」

それがTHINNINGを立ち上げるきっかけになった。

糸島にあるセレクトショップ「糸島くらし×ここのき」で知り合った、木工や林業に携わる仲間たちと話し合い、イベントの構想を練った。暗い森に光を射すように、知っているようで知られていない荒廃林や間伐の大切さに光を当てる。そのために生まれたのがTHINNINGだった。

最初は6人で企画を立てて始めたマーケット。年2回の開催を続けるうちに規模は徐々に大きくなり、今では1日の来場者が2,000人を超えるまでになった。

イベントでは、間伐にちなんだ商品だけでなく、飲食やアパレル、雑貨など、さまざまなものを扱っている。ライブやトークショー、はたまたピンボールのようなゲームまで、訪れた誰もが楽しめる内容だ。そこかしこで笑顔があふれる会場。THINNINGに込められている強いメッセージとは、対照的にも思える。

「ただ、堅いメッセージを押し付けたくなくて。会場に来ていただいて楽しんでもらい、山の現状を知ってもらえればいいんです」

そう語るのは薦田雄一さん。糸島で生まれ育った「キコリ」だ。一度は林業からも糸島からも離れたものの、距離を置いたことで自分にとって大切なものを見つめ直せた。地元に戻ってからは、木工作家と林業を両立している。

国土の7割近くが森林にも関わらず、林業が仕事として成立しにくい現状を把握している人は少ない。安い輸入材が主流となり、国産材は価格が低迷して久しい。薦田さんはまずは知ってもらうことが第一歩だという。

「伐っても売れないから林業の担い手が増えませんし、人が入らないからますます荒廃林が増えていきます。そうした現状を知ってもらうだけでも意味のあることです」

現状を伝えるとともに、森林を守るために間伐が果たしている役割を説明する。そうすることで、同じ木製のものであっても、間伐材を使った商品に関心を持ってもらえるのだという。

糸島市内の「木の駅伊都山燦」には持ち込まれた間伐材がストックされている

植物を育てているうちに「森のポット」は自然に還っていく

そうした活動の一環として、薦田さんは伐り出した杉に手を加え、植物を入れるポットを作っている。雨風にさらされていくうちに、自然に還っていくポットである。

間伐材を使った商品が増えていくことで、林業に大きな循環が生まれる。商品を作るために、糸島にある貯木場にストックされた間伐材を購入する。その木は製材所に運ばれて、木材に加工され、さらに商品へと姿を変えていく。商品が流通するようになれば、林業に携わる仕事も活性化していく。だから、関心を持ってもらうだけでもありがたいというのだ。

森について考えることは、本好きにも無縁ではない。

本を考えることにもつながる。本は紙からできている。紙は木から作られる。木は森によって育まれる。森は人の手によって守られる。

THINNINGのメインスローガン「空を、あけよう」には、陽光の当たらない暗い森を、明るい状態にしようという思いが込められている。それだけに留まらず、林業の置かれている状況を知る、知識の扉をあけてくれる。