イムズが残してくれるもの

本は知識を授けてくれる。ものごとを体系的に学ぶための学校であり、新しい文化の設計図であり、想像力を豊かにする刺激でもあった。それと同様に「BOOK at ME」の会場であるイムズもまた「知の源泉」として、時代をリードしてきた。

「本」という字が「物事のおおもと。始まり」を意味するように、イムズも九州における文化をつくる拠点としてスタートする。始まりは1989年4月12日、元号が昭和から平成になって間もない時期である。現在から時間をさかのぼって考えてみると、時代を切り拓いていく存在として開館した時期も象徴的だったことがうかがえる。

当時つくられた「私はショーワを知りません。」という広告にイムズの新鮮さが感じられる。「イムズ=Inter Media Station」という名前にもなった、コンセプト「情報受発信基地」も斬新な試みであった。

商業ビルでありながら、ショッピングフロアは地下から3階まで。それより上階は文化施設やコミュニケーションゾーンなどに分けられていた。施設を貫く大きな吹き抜けも当時は珍しかった。計800坪を有効活用しないのはあり得ないと考えられていた時代だったが吹き抜けから新風が吹き込む予感にあふれていた。

その予感通り、コンテンポラリーアートの展示、ジャズフェスタ、イムズ芝居をはじめ、さまざまな文化が発信された。年間で1,000件を超えるイベントを開催する年もあったという。モノ消費からコト消費への転換が叫ばれる以前のことである。コンセプトである「時代波震源地」をそのままに、九州全域に新しい時代の波を巻き起こしていった。

東京中心ではなく、地方から独自の文化を発信する姿勢は、当時も驚きを持って迎えられた。さらに、こうして振り返ってみることで、その先進性に再び驚かされるのである。

イムズは2021年8月いっぱいで閉館する。本は多くの人に愛されて、モノとして形を残すが、イムズはモノとしては残らない。情報発信を通じて新しい時代をつくってきたのだ。形に残らない終わり方もイムズらしいのかもしれない。これまで築いてきた文化は多くの人の心や街に残り続ける。

(左)阿部由香里さん、(右)大森和香代さん

イムズ出来事年表

Year IMS & Social events Best seller book
1989
  • イムズグランドオープン
  • 昭和天皇崩御、元号が平成に
  • アジア太平洋博覧会「よかトピア」開催
本の表紙
TUGUMI 吉本ばなな
1990
  • アーティストフェスティバル福岡'90
  • スペースワールドオープン
  • 普賢岳噴火
本の表紙
「NO」と言える日本 盛田昭夫/石原慎太郎
1991
  • 福岡県文化百選(建物編)に選ばれる
  • 湾岸戦争勃発
  • ソビエト連邦崩壊
本の表紙
Santa Fe ・宮沢りえ写真集 篠山紀信
1992
  • イムズモーターショー1992
  • ハウステンボスオープン
  • 夏季オリンピック・バルセロナ大会開催
本の表紙
さるのこしかけ さくらももこ
1993
  • デザイン・オブ・ザ・イヤー'93
  • Jリーグ開幕、博多港国際ターミナル開設
  • 福岡ドーム完成
本の表紙
磯野家の謎 東京サザエさん学会
1994
  • IMS 5周年
  • 九州宝島展'94
  • 関西国際空港開港
本の表紙
大往生 永六輔
1995
  • 福岡コンピューター・グラフィック展
  • アクロス福岡オープン
本の表紙
遺書 松本人志
1996
  • イムズスタイル〜コレカラ・イマカラ〜
  • キャナルシティ博多オープン
本の表紙
脳内革命 春山茂雄
1997
  • イムズデザイン・カタチズム'97
  • 博多大丸東館エルガーラビル、福岡三越オープン
本の表紙
失楽園 渡辺淳一
1998
  • 《イムズ入館者1億5000万人突破》
  • 発泡酒市場拡大
本の表紙
ビストロスマップ KANTANレシピ ビストロスマップ制作委員会
1999
  • IMS 10周年
  • 1999年流行ものにみる2000年流行もの大予測展
  • 福岡ダイエーホークス、福岡の球団として41年ぶり日本一。
本の表紙
五体不満足 乙武洋匡
2000
  • 2000年流行ものグッズに見る「21世紀流行もの大予測展」
  • マリノアシティ福岡オープン
本の表紙
話を聞かない男、地図が読めない女 アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ
2001
  • 《イムズ12~14階フロアリニューアル心とからだの美と健康~水と緑のレストラン&リラックスゾーン誕生》
  • アメリカ同時多発テロ
本の表紙
チーズはどこへ消えた? スペンサー・ジョンソン
2002
  • 福岡音楽人~ビート・シティの過去・現在・未来展
  • サッカーW杯(日韓同時開催)
本の表紙
ハリー・ポッターと賢者の石 J・K・ローリング
2003
  • 2003年がんばれ!! ミュージアム
  • イラク戦争始まる
本の表紙
世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一
2004
  • IMS 15周年
  • 九州の若手クリエイター展
  • 九州新幹線、新八代・鹿児島中央間が開通
本の表紙
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 J・K・ローリング
2005
  • イムズサマーフェスタ2005スペシャル 「東京物語」
  • 福岡県西方沖地震 M7
  • 福岡市営地下鉄七隈線開業、九州国立博物館開館 DESIGNING? / デザイニング展(2014年まで開催)
本の表紙
頭がいい人、悪い人の話し方 樋口裕一
2006
  • イムズモーターショー2006
  • 新北九州空港開港
本の表紙
国家の品格 藤原正彦
2007
  • 愛のメッセージ展
  • 新潟県中越沖地震
本の表紙
ホームレス中学生 田村裕
2008
  • 九州ぐらしvol.6 「そこにある毎日」
  • iPhone 3G 日本で初めて販売
  • オバマが大統領に
本の表紙
夢をかなえるゾウ 水野敬也
2009
  • IMS 20周年
  • 《イムズ12・13階レストランリニューアル イムズテラスダイニング誕生》
  • 民主党 政権交代
本の表紙
1Q84 村上春樹
2010
  • くまのがっこう絵本展 〜くまのこたちの夏休み〜
  • 福岡PARCOオープン
本の表紙
体脂肪計タニタの社員食堂 タニタ
2011
  • 季節を巡るツリーハウスプロジェクト
  • JR博多シティオープン
  • 東日本大地震
本の表紙
謎解きはディナーのあとで 東川篤哉
2012
  • Book at Me 開催
  • 福岡都市高速道路全線開通・環状線誕生
  • 東京スカイツリー開業
本の表紙
聞く力 阿川佐和子
2013
  • FLOWER FASHION SHOW
  • 2020年夏季五輪・パラリンピック、東京開催決定
本の表紙
医者に殺されない47の心得 近藤誠
2014
  • IMS 25周年
  • 大空気展〜KOO-KIが作る映像と仕事
  • 御嶽山が噴火、58人死亡5人不明
本の表紙
人生はニャンとかなる! 水野敬也/長沼直樹
2015
  • 外国人観光客激増
  • 爆買い(流行語大賞)
本の表紙
火花 又吉直樹
2016
  • あっぱれ滝桜プロジェクト
  • 熊本震災
  • 博多駅前道路陥没事故
本の表紙
天才 石原慎太郎
2017
  • tupera tuperaのなつまつり
  • 九州北部豪雨
  • 宗像・沖ノ島と関連遺産群世界文化遺産
本の表紙
九十歳。何がめでたい 佐藤愛子
2018
  • IMS AUTUMN RUGBY PARK
  • 築地市場閉場、西日本豪雨
  • 西日本大濠花火大会終了
本の表紙
(漫画)君たちはどう生きるか 吉野源三郎/羽賀翔一
2019
  • IMS 30周年
  • 「令和」に改元
本の表紙
一切なりゆき 樹木希林
2020
  • 最果タヒ 詩のインスタレーション
  • 中国・武漢で新型肺炎発生
本の表紙
鬼滅の刃 吾峠呼世晴