本好きさんからの課題

私が皆様に伝えたいのは、笹井宏之さんの短歌です。笹井宏之さんは佐賀県出身の歌人。2004年から短歌を詠み始め、2009年1月に26歳で亡くなるまでのおよそ5年間に多くの作品を残しました。彼が詠んだのはこのような短歌です。「ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす」「えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい」「拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません」笹井さんは身体表現性障害という難病を患い、例えばピアノを数十分弾くのにも数日間じっとしてエネルギーを蓄えなければ動くことができないという、ほとんど寝たきりの状態で創作活動を行っておられました。彼の作品は現実を飛び越えてどこまでも自由に広がり、キラキラとした透明性のある詩情をたたえています。私は初めて笹井作品を読んだ時、この不思議な世界は何だろう? と嬉しくなり、同時に、彼の世界の中で歌われている優しさの純度が高すぎるような気がして泣いてしまいました。以来、笹井さんは自分の中で特別な歌人であり、現在は笹井宏之さんの歌集を三冊出版している書肆侃侃房という出版社(が運営している書店)で働いています。書店のレジに立っていると、笹井宏之さんの歌集が今もよく読まれていると感じますが、普段短歌を読まない方にも笹井さんの歌をもっと広く知っていただきたく、今回応募いたしました。笹井さんの短歌をモチーフに、クリエイターの方にアート作品を制作していただけたら、これほど嬉しいことはありません。クリエイターさんが笹井作品から感じたことを自由に制作していただければと思っており、作品の表現形式は特に指定はありません。「風」「音楽」「透明感」「光」などがキーワードとして挙げられると思います(飽くまで一例です)。(坂脇由里絵)

牛原佳穂

牛原佳穂

福岡・グラフィックデザイナー兼イラストレーター。1992年生まれ、福岡県在住。いくつかのデザイン事務所を経て、2020年からフリーランスで活動中。

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