本好きさんからの課題

冒頭たった6ページで主人公が壮絶な死を迎える序章に度肝を抜かれたSF小説。余命半年と宣告された主人公・サマンサの絶命までを、終始、痛みと不安を降り積もらせながら描き切っている。サイエンスフィクションでこんなに「死」を突き詰めている世界観に「なんだこれは…」と語る言葉を失った。人を人たらしめているものは脳の電気信号にすぎない「感情」か量子PC内に生成された疑似神経が持たない「身体の死」かサマンサは、人間は生物が無目的に知性を持っただけのものにすぎず、意味はないと言う。疑似神経脳をもつ「人格データ」の〈wanna be〉が自分にプログラムされた「小説を書く」ことで自分に意味を持たせ認められようとするその対比に、人生に意味はあるのか?という人の葛藤を痛切に感じる。
『物語は言語を使って、読み手から一秒でも一瞬でも“言語を奪う”ことができた』そう語る〈wanna be〉の言葉は、ああ、そうだ、本を読んでいるときは現実からある意味逃避して、自分という人格が存在してないな、と納得がいく。本を読むことは、知識を得るためだけではなく自分の人格をミュートして感情を揺さぶる行為だと思う。できることなら読み終わった後、取り戻した言語を駆使して語りあえることができればいい。トモダチいないので誰も見ないSNSに感想を書き綴る己を少しかわいそうに思う。なのでこんな機会をいただけて非常に感激しているのにこんな重苦しい作品を選んでごめんなさい。読み手によっては救いのない鬱な作品ととられそうだがこれはそれぞれの「物語」。個人的には燦然と輝く生を感じる壮大な(ちょっとラブありの)物語だと思う。(いなますまり)

森海里

森 海里(JAGDA大分)

イラストレーター・グラフィックデザイナー。大分市でイラストレーターとグラフィックデザイナーをしています。いろんなタッチで書き分けます。猫好きです。

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